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xR連載 ep1. XR SQUADが描く未来のバーチャルプロダクション。
”xRの魅力は 物語を現実にする技術”篇

kana Oct 22 2021

2021年9月にはレイバンとfacebookが共同開発したスマートサングラス「Ray-Ban Stories」が、Amazonからは家庭用ロボット「Astro」が立て続けに発売された。東京パラリンピックの閉会式にはバーチャルヒューマンのimmaが登場し、リアルな人間と変わらない存在感を示した。NFTアートが仮想通貨でトレードされ、ゲームプラットフォームで人々はライブに行く。テクノロジーとインターネットの発展で、現実の世界とバーチャルな世界はどんどん混じり合っていく。そのような増殖する多様な”現実”をxR(エックスアール)と総称する。今後加速していくであろうxRの分野をBASSDRUMのXRチーム「XR SQUAD」のテクニカルディレクターである小川恭平さんに三回に渡って解説してもらう。第一回目はxRの基礎を学んでいきたい。

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xRの魅力は
物語を現実にする技術

──小川さんはxRの分野を主戦場にBASSDRUM社でテクニカルディレクターとして活動されていますが、まずはxRとは何なのかということ教えてください?VR、AR、MRとはどう違うのでしょう?

全てにつく「R」は「リアリティ」の略で、つまり自分たちが「知覚する現実」を表しています。じゃあその現実がどういう現実なのかというのを、その前の単語「V」や「A」で説明しているんですね。「VR」だとVirtual Reality(バーチャルリアリティ)=仮想現実。ヘッドマウントディスプレイなどをつけて没入するゲームの世界がわかりやすい例かと思います。

「xR」はVR、AR、MR、SRらの総称で、全部ををまとめて「エックスアール」と呼んでいます。「X」は”Extended(拡張)”を意味したり、現実とバーチャルが”Cross(交差する)”という意味も内包していたり、未知数を表す「X」でもあるんです。この分野は加速度的に発展しているから、今はARとVRといった複数の技術をミックスして使うのが普通になってきたし、エンジニアの僕自身でさえ、ARとMRの明確な違いを説明することは難しくなってきています。まだ見たことのない「xな現実や体験」を表現するテクノロジーと理解してもらうといいかと思います。

小川さんの話をもとに簡潔にまとめました。ご参考に!


──xRに携わっている小川さんから見て、どんなところに面白さを感じていますか?

僕の最初の仕事は出版社で編集者でしたが、そこでの体験がきっかけでした。漫画「宇宙兄弟」に、登場人物の伊東せりかがALSと闘うために医者になるエピソードがあります。そのせりかの夢が実現するよう願いを込め、ALSの研究開発費をあつめる「せりか基金」を起ち上げる仕事に携わりました。プロジェクトメンバーの一人として、物語を現実にするという過程を体験し、強く心を動かされました。その物語が現実化していく感覚を追い求めていた結果ここ(xR)にたどり着いているんだと思います。

──それにしても、文学の世界からコーディングの世界への転身は、使うスキルも違って思い切りが必要だったのでは?

編集業務の一環としてWebサイトを作って、編集者兼Webエンジニアとしても仕事をしていたんです。歴史小説の作家さんを担当していたので、どうにかして書籍の面白さを伝えたい、と思いWebを立ち上げ情報発信をしていました。そのうち「Webだけじゃ足りない、CGが必要だ!」ってなり、独学でCGを勉強し始めました。今では存在しない城や、消滅してしまった歴史的な物を可視化できれば、歴史小説を現実感をもって楽しんでもらえると考えたわけです。

──「物語を現実にする」というアイデアと、ハイブリッドな土台があったんですね。

中国で体験した
バーチャルヒューマンカルチャー

こちらは日本ではavexに所属する中国生まれの有名バーチャルアイドル「ルォ・テンイ」。

──xRをとりまくカルチャーを語る時のキーワードとして、バーチャルヒューマン、ブロックチェーン、メタバース、NFTといったものが連想されますが、小川さんは特にバーチャルヒューマンのR&Dに力を入れていらっしゃると伺いました。

上海にあるバーチャルアイドルを運営している会社で数年間働いていたときにバーチャルヒューマンの洗礼を受けました。日本で言う初音ミクのような、中国で有名なバーチャルアイドルのIPを運営するビジネスをしている会社なのですが、初めてARライブというものを体験したんですね。ライブ会場は上海にあるメルセデス・ベンツアリーナという収容人数約1万8千人を誇る中国でも最大規模。そこがファンでいっぱいになる、衝撃でした。(編集部注:2017年にはアリアナ・グランデ、2019年には乃木坂46がコンサートを開催)

──バーチャルヒューマンといえば、日本ではパラリンピックの閉会式に登場したimmaも話題ですね。

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東京2020パラリンピック閉会式に登場したバーチャルモデルimma

はじめにバーチャルヒューマンにも2つの系統があって、それがミックスすると混乱しそうなので整理をしておければと思います。

日本のimmaやアメリカのLil Miquelaといった、実在はしないが”生きている”という感情を抱かせてくれるバーチャルヒューマンという系統。プリレンダリングによって事前にCGで作り込まれたハイクオリティな表現が特徴的かと思います。もう一つは、自分を拡張する存在としてのバーチャルヒューマン。アバターと呼ばれたり、VTuberの多くはこの系統にあてはまります。技術的にはリアルタイムでレンダリングができるソフトウェアを使って、”中の人”がバーチャルヒューマンを操作するという特徴があります。僕の場合は、後者のバーチャルヒューマン、アバタータイプにとても共感しています。誰でも別の誰かになれるっていうアイデアがいいなって、ユーザーとしても作り手としてもそう感じています。

──自分を拡張するx(未知数)にときめきを覚えますね。これまでも多くの人がSNSで複数アカウントをもってアルターエゴを実現してきていますが、さらにリアリティが加わっていく感じがします。

第二回「xR 世界の事例」篇では、実際に現在世の中でどんなことが起きているのか、小川さんに世界の事例を教えてもらいます。お楽しみに!

PROFILE

小川 恭平|テクニカルディレクター

1993年京都生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。学生の頃よりエンターテインメント業界に携わり、漫画を中心としたクリエイターエージェンシーでエンジニア兼編集者を経験する。独学で3DCG制作を始めた後、上海に渡り、中国ナンバーワンのバーチャルアイドルのステージ演出やミュージックビデオの映像制作・動画配信を担当。2020年よりアソシエート・テクニカルディレクターとしてBASSDRUMに参画し、エンターテインメント・AR/VRのエンジニアリング、ウェブサイトやサービスの構築からコンテンツまで、幅広いプロジェクトに携わる。

bykana

NEWREELの編集者。コツコツと原稿を書く。

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